内科

風邪

一言で風邪といいましても、様々な病態があります。典型的な風邪症候群とはあらゆる年代、性別、健康状態に関係なく発症する一般的な病気で、咳、鼻水、喉の痛みを伴う急性に発症する感染症です。
風邪

原因

約90%はライノウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどのウイルスによって引き起こされます。ウイルス以外では一般細菌、溶連菌、マイコプラズマ、クラミジアなどが原因となる場合もあります。空気中に浮遊しているこれらの原因となる病原体が、気道の中に入り込み、その粘膜に付着して侵入・増殖し、鼻・咽頭・喉頭といった上気道に急性の炎症が起こる事が風邪の原因です。

症状

鼻症状(鼻水や鼻づまり)、喉症状(喉の痛み)、咳症状(咳)が主な症状ですが、これら3つの症状が同じ程度にある場合は典型的なウイルス性の風邪の可能性が高いです。3つの症状のどれがメインかで注意すべき合併症やそれに対する治療が必要になる事があります(後述:治療の稿参照)。その他に患者さんによっては発熱頭痛、全身の倦怠感を訴える場合もあり、炎症が上気道から気管や気管支まで広がるとたんなどの症状が出てきます。

診断

家族に罹患者がいる場合や、周囲の流行の状況、一般的な問診や診察で診断が可能です。当院ではインフルエンザ、溶連菌、マイコプラズマ、アデノウイルスの迅速診断ができます。また、必要に応じて胸部レントゲン検査、尿検査、血液検査などを行います。

治療

休息が第一の病気で、特効薬と言われるものはありませんが、解熱鎮痛薬、咳止め、去痰薬、鼻水に対するアレルギーの薬、漢方薬など、症状を緩和させる薬はあります。最も大切なことは風邪に似ている他の病気を見逃さない事です。例えば、甲状腺の炎症や喉の奥に膿が溜まったりする病気もあるため、このような病気を見逃さない事は大切です。風邪が長引く事による二次性(続発する)の病気は適切な治療が必要になります。鼻症状が長引いて副鼻腔炎を起こしたり、喉の症状は溶連菌感染症や扁桃腺に膿が溜まったりする事などに気をつける必要がありますし、咳が長引く場合は細菌による肺炎や他の原因の肺炎などの可能性があるため、早めに診断し治療する事が大事です。

インフルエンザ

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる冬場に流行する季節性の病気です。風邪のように咳、鼻水、喉の痛みに加え、高熱や関節痛、筋肉痛などが特徴的です。基礎疾患がある方や小さなお子さん、妊婦、高齢の方は重症になりやすい病気ですので、一般の風邪とは違う病気と理解したほうが良いと思います。
インフルエンザ

原因

インフルエンザに感染した人の咳やくしゃみの中に含まれるウイルスを吸い込む事でうつる飛沫感染や、ウイルスが付着した物などに触れる事でうつる接触感染などが感染経路としてあります。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3種類があり、流行するのはA型とB型です。ウイルスの表面には糖蛋白という物質がありこの組み合わせにより、様々な亜型と呼ばれる、抗原性が異なる種類が存在します。さらに、亜型の中でもウイルスの遺伝子の突然変異によって性質が変わるため、毎年流行を起こしますし、流行となるウイルスのタイプが変化するのがインフルエンザの厄介なところです。

症状

感染後およそ1~3日ほどの潜伏期間の後に、38度以上の発熱、倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛、喉の痛み、咳、鼻水などの全身症状が急激に出現する事が特徴で、下痢腹痛を伴う事もあります。糖尿病や免疫機能が低下している患者さん、肺、心臓、腎臓に慢性疾患を持つ患者さんでは、インフルエンザが重症化しやすく、二次的な細菌感染症(肺炎など)を起こしやすくなり、肺炎が重症化すると命に危険が及ぶ事もあります。また小児の患者さんでは中耳炎、気管支喘息、熱性痙攣などを引き起こす事も知られています。

診断

最も確実な診断方法は、急性期の患者さんの咽頭のぬぐい液か、うがい液を採取し、ウイルスの分離を行うです。また、血液検査でインフルエンザウイルスの抗体が上昇しているかを確認する方法もありますが、結果がでるまでに時間がかかります。
このため、最近では外来で10~20分程度で結果が出るインフルエンザ抗原検出キットが、広く利用されるようになり、当院においてもこの診断キットを用いて診断を迅速に行うで、早期の治療開始ができます。

治療及び予防

一般的な風邪と同様に十分な睡眠と休養を取る事がまず必要です。また、脱水にならないよう水分を十分に補給する事も大切です。
インフルエンザウイルスが体内で増殖するのを抑制するノイラミニダーゼ阻害薬という抗インフルエンザ薬には、内服薬、吸入薬、点滴の3種類があります。年齢や全身状態、重症度などによって選択されます。また、これらの治療薬は症状が出てからウイルスの増殖のピークである48時間以内に開始しなければ効果が現れにくくなるため、発症後できるだけ早く服用する事が肝要です。早めに治療する事で、治るまでの時間を短縮する事ができ、重症化の予防にもつながります。対症療法として、解熱鎮痛剤や鼻水を抑える薬などを併用する事もあります。解熱鎮痛剤の中にはインフルエンザの合併症、肝臓や脳に重篤な副作用のリスクを高めるものがありますので、自己判断は危険です。症状を説明して、必ず医師が処方する薬を服用する事が重要です。解熱後2~3日はインフルエンザウイルスを排出すると言われていますので、その間はなるべく外出を控えましょう
インフルエンザは続発性に肺炎などを起こす事がありますので、特に高齢の患者さんなどは注意深く観察する事が重要です。
予防法としては、流行期には人混みを避け、マスクを着用する事で、他人から感染したり、他人を感染したりしないよう気をつけましょう。また、手洗いうがいはこまめに行いましょう。顔にもウイルスが付着している事がありますので、できたら洗顔する事もお勧めいたします。ウイルスは乾燥した環境で活発化しますので、部屋の中は適度な湿度と温度を保ちましょう
免疫力の低下は感染しやすくなったり、重篤化の原因になります。バランスのとれた食生活、十分な睡眠をとる事を心がけましょう。
インフルエンザのワクチンはその年の流行を予測して作られるものですが、ウイルスがどんどん変わったりするため、完全に予防する事はできません。しかし、インフルエンザの予防接種によって小児(6ヶ月から15歳)は平均で45%の予防効果があるとする報告があり、65歳以上の高齢者に関しては50%前後の発症リスクの低減、80%以上の死亡リスクを減らすと言われており、是非予防接種を受けていただきたいと思っています。予防接種を受けて約2週間後から5ヶ月位はインフルエンザから守る事ができますので、インフルエンザの流行期間が11月から4月である事を考えると、予防接種は11月中までには受けていただくのが良いと思います。

生活習慣病

高血圧

高血圧はよほど悪くなるまでは無症状であるため、放置されている事が少なくない病気です。一般的には最大血圧が140mmHg以上、あるいは最小血圧が90mmHg以上ある場合、高血圧と言います。高血圧には何らかの基礎疾患やお薬の影響などの原因があるものもありますが、ほとんどが隠れた病気がなく、原因となるものがないタイプです。高血圧を放置すると、血管に圧力の負荷がかかりますので、血管の内側が分厚く硬くなって(動脈硬化)しまう事で、更に血圧が高くなってしまう悪循環に陥ります。これが血管年齢の高齢化です。このため脳卒中になりやすくなったり、心臓に負荷がかかり、心不全、狭心症、心筋梗塞などの危険性が増えてきます。ですから、血圧が高いと言われたら、症状がなくても早めに受診しましょう。最大血圧を10mmHg、最小血圧を5mmHg下げる事ができれば脳卒中のリスクを約40%、狭心症や心筋梗塞などのリスクを約20%下げる事ができると言われています(高血圧治療ガイドライン2014より)。
では、どれぐらい血圧を下げればいいのでしょうか?
高血圧治療ガイドラインでは目標の血圧を年齢や合併症によって細かく示されています。
高血圧
生活習慣病
目安で示す診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHg が、高血圧の診断基準であることから、この二者の差をあてはめたものである
また、冬場になると血圧が上がる傾向なのはご存知でしょうか。寒くなると交感神経が働いて血管が収縮することが原因の一つです。他にも寒いため汗をかかなくなったり、運動不足なども原因として挙げられます。
夏場に比べると収縮期血圧(上の血圧)が10程度上がる患者さんは多くいらっしゃいます。20以上、上昇する人も少なくありません。
運動不足は努力できても寒さにはやはり影響されますので、血圧の薬は季節に応じた見直しをしています。冬場に血圧が上がるのは心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がりますので、かかりつけ医としては血圧の管理を細かく行っていきたいと考えています。ですから、家庭での血圧に変調がある患者さんは1ヶ月の処方とかではなく少し短い間隔で来院していただき血圧のコントロールをするように心がけています。
高血圧の治療はどのように治療していくのでしょうか?
1.食生活の改善
栄養のバランスのとれた食事を摂る事、飲酒量を減らす事、塩分を控える(1日6g未満)事などが大切です。肥満気味の人は食事量の減量も考えて標準体重(BMI:25未満)に近づけるように目標を立てましょう。
2.禁煙
喫煙は動脈硬化の重要な原因の一つです。当院では禁煙されたい方のための禁煙外来も行っていますので、是非ご相談ください。
3.運動療法
ウォーキングや軽いジョギング、水泳などを無理なく続ける事が大切です。血圧の状態によって運動の量なども考えなければなりません(中等度以上の高血圧の方にはあまり激しいトレーニングはお勧めしません)ので、それぞれの患者さんの状態やライフスタイルにあった運動を計画をたててやっていくのが効果的です。
4.内服治療
上記のような生活習慣の改善を一定期間やっても血圧の改善がない場合は血圧を下げるお薬を飲むことが必要になります。血圧を下げるお薬にはいろんな種類がありますので、その人にあったお薬を飲んでいただきます。指示された用量、用法を守る事は大切なことで、適切な内服がなされないと、血圧が下がりすぎたり、薬による他の副作用などが出ますので、定期的に受診しながら最適な血圧を保ちましょう。

糖尿病

皆さんの食事に含まれている糖が小腸から吸収されて血液中に入ると血糖値は上昇しますが、このとき正常な人の場合、膵臓で作られるインスリンというホルモンによって血糖を下げる事ができます。糖尿病とはこのインスリンの量が足りなかったり、働きが悪くなったためにおこる病気です。日本人の大半は2型糖尿病といわれるものであり、遺伝、過食、運動不足、肥満、加齢などが関係していると言われています。近年、日本でも糖尿病患者は増加傾向で、約1,000万人(40歳以上の4人に1人)が糖尿病が強く疑われる、もしくは糖尿病の可能性が否定できない状態にあると言われているます。血糖が高くなると、血管の内側の組織が破壊されて栄養や酸素が体に適切に行きわたらなくなり、様々な合併症を起こします。
糖尿病(高血糖)を疑う症状としてはどのようなものがあるでしょうか?
喉の乾き、水分摂取の増加、多尿、体重の減少などがある場合は糖尿病の可能性があります。血糖が徐々に高くなっている場合は症状が無い事も多いのですが、放置され、過度な高血糖に至った場合は倦怠感、手足のしびれ、視力障害、麻痺や意識が悪くなったりする事もありますので、早めに相談する事をお勧めいたします。
合併症とはどのようなものでしょうか?
【糖尿病性腎症】
血糖のコントロールが悪い状態が長く続くと、腎臓の機能が低下していきます。腎臓が機能しなくなると最終的には人工透析が必要になります。
【糖尿病性網膜症】
血糖が高い状態が続くと血管の内部が破壊され酸素や栄養が行きわたらなくなりますが、目の毛細血管が敗れると視力の低下、失明などに至ってしまいます。年間に約3,000人の糖尿病患者が失明していると言われています。糖尿病性網膜症の予防のためには適切な血糖コントロール以外に血圧のコントロールも重要です。
【糖尿病性神経障害】
血糖のコントロールが悪いと神経細胞が傷害され全身の神経障害が起きます。神経には感覚や運動を司るものの他に自律神経といって内臓の機能に関係しているものがあるため、これらが障害を受ける事で様々な症状が出現します。 足にしびれや痛みを感じたり、まったく感覚がなくなったりします。
胃腸の動きが悪くなり、下痢や便秘の原因にもなります。
目の動きが障害されたり顔面神経麻痺なども起こすことがあります。
膀胱や生殖器などの神経が障害をうけると、排尿障害や勃起障害などがおきます。
血管の状態の調整や体のバランスがわるくなり起立性低血圧(立ちくらみ)や動悸、下半身の筋肉が萎縮したりします。
大きな血管が障害されると、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。
糖尿病は怖い病気でしょうか?
確かに様々な症状や合併症を考えると怖い病気かもしれません。しかし最も大切な事は糖尿病を正しく理解し、厳重に管理する事によってこのような合併症の発症や進行を予防する事です。糖尿病と診断されたら、一生上手に付き合っていかなければなりませんので、定期的な受診をしながら様々な観点から、かかりつけ医と患者さんが一緒になって対処する必要があります。
糖尿病の治療、管理とは?
糖尿病の管理項目としては飲酒の制限、体重管理、禁煙の指導、食事指導、運動指導など、包括的な管理が必要になります。適切な血糖の管理はもちろんのこと、血圧や脂質などの管理も重要です。
食事や運動療法を一定期間行っても血糖コントロールが不良な場合は内服による治療が必要になります。糖尿病の内服治療には現在様々な薬がありますが、それぞれの患者さんにあった(年齢や合併症など個々人で適切な薬剤を選択する必要があります)薬を処方し、同時に先程ご説明したような管理を行っていきます。管理項目全てをすべて完璧にこなすことは簡単なことではありませんし、長続きしませんよね。それぞれの患者さんにあった自己管理や教育支援を行いながら、実行可能な治療計画を一緒に考えてまいりましょう。

脂質異常症

脂質は人の体を保つための貯蔵エネルギーとなったり、細胞の一部を形成したり、ホルモンを作る際に必要であったりと、体の機能を保つために重要な働きをしています。脂質は食物から取り込まれたり、肝臓で作られたりします。脂質異常症は、体の中の脂質のバランスがくずれる事で、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪(トリグリセリド)が高くなったり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低くなる事で、高血圧や糖尿病などと同様に、動脈硬化を引き起こす原因となります。放置されると、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを起こしてしまいます。他の生活習慣病と同じように自覚症状がないために放置されてしまうことが少なくない病気です。
脂質異常症
脂質異常症には大きく3つのタイプがあります
1.高LDLコレステロール血症:悪玉コレステロールが多いタイプ
2.低HDLコレステロール血症:善玉コレステロールが少ないタイプ
3.高トリグリセリド血症:中性脂肪が多いタイプ
脂質異常症の診断基準を以下の表にお示しします。
脂質異常症診断基準(空腹時採血)*
脂質異常症
*10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。
**スクリーニングで境界域高LDL-C血症、境界域高non-HDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する。
LDL-CはFriedewald式(TC-HDL-C-TG/5)または直接法で求める。
TGが400mg/dL以上や食後採血の場合はnon-HDL-C(TC-HDL-C)かLDL-C直接法を使用する。ただしスクリーニング時に高TG血症を伴わない場合はLDL-Cとの差が+30mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。
多くの脂質異常症は食生活、体質、運動不足、体重増加などの生活習慣に関連する事が原因で成人以降に発症しますが、これらの脂質異常症は他の病気が原因(糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓病、肝臓病、経口避妊薬やステロイドなどの薬剤)で起きる二次性脂質異常症と、他の原因となるものが明らかにない原発性脂質異常症があります。脂質異常症の原因となる病気や内服薬がある場合はそれぞれの病気に対処する事で改善させる事ができます。原因となる病気などがない場合、遺伝性の脂質異常症である家族性脂質異常症なども見落とされてはなりません。
治療
治療目標は患者さんごとに違います。すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしていて、その治療中の方や、高血圧、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方はより低いLDLコレステロール値を目指す必要があります。 脂質異常症は動脈硬化を進行させ、命に関わる合併症を引き起こす病気です。症状がなくても、脂質異常症の心配がありそうな方は早めに受診して適切な治療をはやめに始める事が重要です。動脈硬化のリスクファクターとしては、年齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の家族歴、低いHDLコレステロール血症(HDLコレステロール<40mg/dl)などがあります。リスクが多い人はより厳格な治療目標が必要となります。
脂質異常症
1.食事療法
標準体重(kg)は身長(m)x身長(m)x22で計算する事ができます。肥満傾向がある方は標準体重を目指して、適切な食事量を摂取し減量に努めましょう。急な減量は長続きしないばかりか体にも悪影響を及ぼしますので、一緒に計画をたてて目標を少しずつ達成していきましょう。
1-1. 和食を主体とした食事に切り替えます。大豆製品や青魚にはコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。味付けは薄めにして動物性脂肪の摂取を減らし、魚や植物性脂肪の摂取主体の食生活にしましょう。
1-2. コレステロールが多い食品(卵類、レバー、たらこなど)は控えて、食事は朝、昼、夜規則正しく適量を取って、就寝前の食事や間食をしないよう心がけましょう。
1-3. お酒の量を減らしましょう。アルコール量として1日に25g以下が良いとされています。
目安としては、ビールなら中瓶1本、日本酒は1合、ワインはグラスに軽く一杯程度となります。
1-4. お菓子や清涼飲料水などの過剰な糖分の摂取を控えましょう。
1-5. 食物繊維にはコレステロールの吸収を抑制する働きがあります。緑黄色野菜なども取り入れていきましょう。
2.運動療法
毎日の有酸素運動(30分以上)は中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす効果があります。
2-1. 運動の強度としては、少しきついなと感じる程度が良いでしょうが、高血圧、心臓病などをお持ちの患者さんは急な負荷を体にかけすぎないよう、自分で運動療法を始める前にかならずかかりつけ医と相談してから始めましょう。
2-2. 理想的な有酸素運動とはどんな物があるでしょうか?
ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳、プール歩行などがありますが、なかなか毎日運動の時間が取れない事も多いですよね。そういう場合は生活の中で運動を取り入れる事も良いアイディアです。例えば、通勤途中、仕事場からに少し遠い駅やバス停で降りて歩く、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う、休み時間などの空いた時間に、両足を交互に上げてジョギングのような動作を30秒から1分やってみる、椅子を使って登り降りして運動を行うなど工夫次第でいろんな選択肢があります。
2-3. 毎日の運動が難しければ週に3回は有酸素運動を心がけて、数カ月間続けてみます。体重変化や血圧の変化、脂質の値をグラフやノート、カレンダーなどに記録したりすると、目標達成感が得られて、その後に続けるモチベーションにもなります。
3.薬物療法
禁煙、食生活の改善、減量、運動療法などが治療の基本ですが、これを数ヶ月続けても改善がない場合は内服治療が必要となります。内服治療薬には以下のような種類があります。
3-1.
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン):LDLコレステロールを下げ、中性脂肪も下げます。
フィブラート系:主に中性脂肪を下げますが、LDLコレステロールを下げたり、HDLコレステロールを増やしたりする作用があります。
エゼチミブ:腸の中でコレステロールを多く含む胆汁酸という物質の再吸収を抑制する事でコレステロールを下げます。
レジン:陰イオン交換樹脂で、腸の中でコレステロールを多く含む胆汁酸と結合して便として排泄する事でコレステロールを下げます。
ニコチン酸:肝臓で中性脂肪が作られるのを抑え、HDLコレステロールも上げる働きがあります。
プロブコール:LDLコレステロールを下げて、動脈硬化を予防する働きがあります。
エイコサペンタエン酸(EPA):青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸から作られた薬で中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする働きがあります。
3-2. 薬物療法を行う場合でも、生活習慣の改善は不可欠です。食事療法や運動療法を継続して行いましょう。
ただし、脂質異常症の診断時にすでに糖尿病や高血圧がある人、喫煙者、遺伝的に動脈硬化を起こしやすい病気の人(家族性高コレステロール血症)など動脈硬化のリスクが高い人はすぐに薬物療法が必要です。
個々の患者さんで目標値も違いますし、食事や運動療法など良く相談しながら進めていくことが大切です。症状が出ないうちから早めに予防、治療する事で動脈硬化を防ぎ、動脈硬化によって引き起こされる様々な病気を予防する事ができます。他の生活習慣病と同様、長く付き合っていかなくてはならない病気ですから、定期的な受診をしながら継続的に取り組んでいきましょう。

頭痛

”頭が痛い”といっても、よく”頭痛持ちなんです”とか、天候や体調によって頭が痛くなる人がいますが、そのような方々はあまり病院へ行かないかもしれませんね。市販薬で治ってしまうからかもしれませんし、”ああまたいつものあれだ”と考えがちですね。ですが、頭痛の中には怖い病気や命に関わらなくても生活の質を著しく悪くするものがあります。
頭痛が定期的に繰り返し起きている状態なのか、急に痛くなったかという時点で考え方を変えなければなりません。繰り返し起きる場合だと片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、薬剤性頭痛、こころの病(うつ病)などがあります。頭の両側が痛いのか、片方だけなのか、内服している薬、発症した年齢、他の身体所見などで診断ができます。”いつものやつ”とお考えの方も適切な治療で快適な毎日が過ごせますから、是非ご相談ください。
頭痛

怖い・見逃したくない頭痛とは?

突然の頭痛、いつもと違う(今までに経験したことがないような)頭痛、繰り返しているが頻度が増えた、50歳以降に初めて経験する頭痛、意識障害やめまいなどを伴う頭痛、朝起きると頭痛がおきる、風邪や鼻炎などのあとの頭痛、体位を変える事で悪くなったりする頭痛、片方のこめかみがビリビリする、目がみえにくい、音が聞こえにくいなどの症状を伴う場合は、命に関わるもの、後遺症を残してしまうものなどが考えられますので急いで受診してください。以下のような病気が潜んでいます。
くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎、緑内障発作、側頭動脈炎、帯状疱疹、高血圧性脳症、副鼻腔炎による頭痛など

めまい

めまいにも種類があります。”回転性めまい”といって文字通り自分の周りがグルグル回っているような感じのめまいと、”浮動性めまい”と呼ばれる、足元がフワフワ揺れたり、フラフラした感じのめまい、”失神前めまい”という、気が遠くなる、血の気が引く感じのめまいのタイプがあります。以前から耳鳴りや難聴を伴うメニエール病によるめまいと診断された方でもめまいの発作が以前より強くて救急室に訪れる方もいらっしゃいます。”いつもと違う”は危険なサインです。持病と軽く考えずに心配な方は是非当院へご相談ください。
めまい

めまいを起こす病気にはどんなものがあるの?

・回転性めまいの代表格は、良性発作性頭位めまい(BPPV)といって、三半規管などの異常(耳の中の小さな石が落ちて三半規管の中を移動する)によるものが最もよく見られるものです。多くの場合は、しばらくすると改善してきます。他に回転性めまいを起こす病気としては、メニエール病(耳鳴り、難聴を伴う)、前庭神経炎(約3割の方に風邪などの上気道感染のあとに起こる。耳鳴りやめまいなどが無い)、突発性難聴(片方の耳、稀に両耳に難聴や耳鳴りが起こる)などがあります。早めに治療をしないと症状が残ってしまう病気もありますので、お早めにご相談ください。
・浮動性めまいは脳血管障害(脳出血や脳梗塞)や脳腫瘍など脳に何らかの原因があって起こる場合があります。
・失神前めまいは出血(胃や大腸の病気、子宮筋腫など)による貧血、不整脈や心臓病によるもの、神経と血管の収縮や拡張の調節がうまくできなくて起きるもの、血圧が不安定になって起こるもの、心因性(うつや神経症)によるものなどがあります。
その他、首に原因があって、首を回したり、伸ばしたりしたときに起こるめまいや、お薬(血圧のくすり、精神安定剤、利尿剤など)が原因で起こるめまいもあります。
グルグルまわる回転性めまいは末梢性めまい(命に関わらない)が多く、フワフワする浮動性めまいは脳に問題がある中枢性めまい(危険なめまい)に見られる傾向がありますが、危険なめまいでも回転性めまいを伴うことがありますので、一概に回転性まめいだから大丈夫ということは言えません。また、失神前めまいは内臓(心臓、消化器、子宮や卵巣など)に危険な病気が潜んでいる場合があり、めまいの原因を特定し、早めに治療する事がとても重要です。

めまいは何科にかかればいいの?

めまいは耳鼻科の病気と思われている方も少なくないと思いますが、ここで説明したように、体の様々な所が原因でおきる病気です。当院では救急科専門医である院長が全身を評価し、まず危険なめまいでない事を確認します。そのうえで、当院で検査、治療できるものはもちろんそのまま適切な処置をいたしますが、耳鼻科、脳外科、産婦人科、精神科など他の専門診療科が必要な原因があれば、その診療科へ紹介いたします。めまいは全身をみる事が重要な病気です。めまいで心配な方は是非お早めにご相談ください。

胸の痛み(胸痛)

胸の痛みと言っても、表面の痛み、奥側の痛み、鈍い痛み、刺すような痛み、胸が裂けるような痛みなど、いろいろあります。もちろん、経験したことの無いような急に発症したような胸の痛みは命に関わる病気を考えなければなりませんが、慢性的な痛みでも、放置すると悪化する事があります。
胸の痛み(胸痛)

危険な胸痛

命に関わる事がありますので、是非躊躇せずにご相談ください。意識が遠のくような場合などは救急車を呼んで救急指定病院に行く必要があります。
心筋梗塞
心臓の筋肉を栄養する(動かすために必要な血を送っている)血管が細くなって詰まる事で心臓の一部あるいは広範囲な部分が動かなくなる事で急に痛みが現れ、ひどい場合は危険な不整脈が起こったり、心臓が止まる事があります。
狭心症
心臓を動かすための血管が細くなったり、一時的に縮こまったりして、胸が締め付けられるような痛みが出たり、違和感がでます。狭心症は体を動かしているときに起こるタイプや安静にしているときに起こるタイプなどありますが、いずれにしても、放置していると心筋梗塞を起こす原因ですので、受診して検査される事をお勧めします。
急性大動脈解離
胸や、胸とお腹の大動脈の壁が裂けて、経験した事のないような激痛が胸や背中に走ります。裂け方や、裂ける場所によって治療法が変わりますが、いずれにしても急いで診断して適切な治療を必要とする緊急性の高い病気です。

呼吸によって痛みが悪くなる胸痛

息を吸ったりすると痛みが増強するような場合は、心臓よりも胸の内側にある胸膜という膜が関係している事が多いです。
胸膜炎
ウイルス感染(風邪のような症状に引き続いて起こる事があります)などが原因で胸の内側の膜(胸膜)に炎症が起こり、息を吸ったりすると膜が伸ばされて痛みが悪化するなどの特徴があります。炎症止めのお薬などの対症療法で改善する事がほとんどです。
心膜炎
心臓の周りにある膜の炎症で胸痛を起こします。息を吸ったときに痛みが強くなったりします。循環器専門の施設での治療が必要になります。
心筋炎
心臓は筋肉でできている臓器ですが、心臓の筋肉自体の炎症で胸痛を起こします。呼吸で悪化する痛み、動作をすると呼吸が苦しくなったりします。専門施設での治療が必要になります。
気胸
突然起きる胸痛です。咳き込んだ後や喘息の発作のあとに起きたりします。肺に穴が空いてしまい、肺から空気がもれて萎んでしまう病気です。肺がかなり虚脱した場合は胸にチューブをいれて肺から漏れた空気を外に出す必要があります。また、漏れた空気が胸全体や心臓を圧迫すると非常に危険な状態になります(緊張性気胸)ので、我慢しないですぐにご相談ください。
肺炎
発熱、咳、膿のような痰が出るなどの症状で胸が痛くなる事があります。肺炎が胸の痛みの原因になる事もあります。ひどくなると胸の中に膿が溜まってしまう、膿胸というひどい感染状態になります。

胸の表面の痛み

胸の表面の痛みは以下に示すような比較的危険が高くない病気が挙げられますが、大切な事は自分では表面の痛みと感じていても、実は肺や心臓に原因がある事がありますので、そういった重要な原因でない事を確認する必要があります。表面の痛みでも危険な病気でない事を検査で除外する必要があります。
肋軟骨炎
急に発症する肋骨と軟骨の炎症による痛みを自覚します。咳をしたり息をこらえたりすると痛みが悪くなる特徴があります。炎症止めのお薬で治ります。
胸鎖関節炎
胸の真ん中の骨(胸骨)を鎖骨をつなぐ関節の炎症で、週単位で痛みが続く事があります。腕も動かしたりすると痛みが強くなります。痛い部分に腫れや、赤み、圧痛などがあります。心臓の膜の炎症や結核などの肺の病気も似たような症状を起こす事がありますので、検査をして関節炎だけであれば炎症止めのお薬で治療します。
帯状疱疹
ウイルスの感染が原因で神経の走行に沿って痛みが生じます。痛みの場所に一致して皮膚に発疹や小さな水ぶくれなどが出ます。治療が遅れると、慢性の神経痛になる事がありますので、早い段階の抗ウイルス薬での治療が必要です。

その他の胸の痛み

逆流性食道炎
胃酸が食道を逆流して食道に炎症を起こす病気です。胸の内側に灼熱感を伴う痛みを自覚したり、不安になるような胸の痛みを訴える方もいらっしゃいます。食後にすぐ横になったりする人は症状が悪くなったりします。胃カメラで診断して適切な内服治療で改善します。
食道攣縮症
冷たい水や炭酸飲料などを飲んだりするとギュッと胸が痛くなったり、飲み込みにくさなどが症状として現れます。食道の中にある筋肉が異常な収縮を起こして起こります。胃カメラ検査などで食道の危険な病気でないことを確認する必要があります。筋肉の収縮を抑えるお薬で治療します。
胆石症
胆嚢に石ができる病気で、皆さんよくご存じの方も多いと思います。右の肋骨周囲の胸の痛みが出る事が多いですが、みぞおちあたりが痛くなる事もあります。脂っこい物を食べた後に痛みが強くなったり、時々右肩が凝ったような痛みがある事もあります。超音波検査で診断します。急性胆嚢炎といって早めに手術をする必要がある事があります。
外傷(けが)
ちょっと転んで、胸を打った、家具などの角に胸や背中をぶつけた、などの後に徐々に胸や背中が痛みます。肋骨骨折や胸骨(胸の真ん中の骨)骨折、軟骨の怪我、筋肉の損傷などがあります。殆どの場合、サポーターのような(バストバンド)装具を装着して痛み止めをすると良くなりますが、怪我の度合いを調べる必要はあります。当院はこのような外傷(けが)にも救急専門医が対応しますので、まずはご相談ください。

息切れ、呼吸苦

息切れや呼吸苦は肺か心臓に原因がある事がほとんどです。急に起こる呼吸苦は、重症の病気を疑う必要があり、救命センターなどへの搬送の必要があるのか患者さんの状態を迅速かつ的確に把握する必要があります。当院は救急専門医が判断をしますので安心してお任せください。慢性的に息切れがある場合、体への酸素の取り込みが比較的良好で、症状が軽度な場合は当院での治療ができます。急性の場合も慢性の場合も当院で治療が十分にできる病気、もしくは危険な病気などがありますので、以下に示します。
息切れ、呼吸苦

急性の呼吸苦

比較的多く見られる病気
気管支喘息小発作、心不全、肺炎、胸膜炎、精神的な疾患(パニック発作、過換気症候群など)など
危険で見逃されるべきではない病気
狭心症、心筋梗塞、気管支喘息大発作、重症肺炎、気胸、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、アナフィラキシー、肺塞栓症、窒息など
以上のように、息切れや呼吸苦を伴う病気には様々な原因があります。肺自体に問題があるもの、心臓に問題があるもの、心臓のポンプが弱って(心不全)肺に負担がかかっているもの、それ以外にも食道や胃などの臓器や精神的な要因、炎症や悪性疾患など鑑別する必要がありますので、当院へご相談ください。

動悸(心臓がドキドキする)

心臓がドキドキする状態は当然、緊張したり、ストレスや疲労などでも起こりえます。実際、動悸を訴えられるケースで病的でないの方もたくさんいらっしゃします。ただ、動悸が喉を締めつけられる感じや、胸の圧迫感などの不快感を伴う場合、頻度や時間が長いなどの場合は、診察する際にとても重要なのが、狭心症、心筋梗塞や、命に関わる不整脈がないかを確認する事です。そのような危険な状態が除外された場合は、他の原因について詳細に調べていく事になります。動悸は以下にお示しいたしますように、様々な原因があります。危険な動悸の場合は、専門の医療機関での治療が必要になります。ご心配な方はまずはご相談ください。
動悸

動悸の原因

期外収縮、貧血、薬剤性(降圧剤、カフェインなど)、甲状腺機能亢進症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、不安障害、パニック障害など

見逃すと危険な動悸の原因

心不全、低血糖、心房細動、致死性不整脈(心室頻拍、完全房室ブロックなど)、心不全、消化管からの出血による急性重症貧血、食道や肺の悪性疾患など

手足の腫れむくみ

手や足の腫れやむくみの原因として、局所的な血流のうっ滞、リンパのうっ滞、感染などの炎症によるものから、心臓のポンプ機能が低下する心不全、腎臓の機能が低下する腎不全、甲状腺機能の異常、肝臓の病気など全身性の病気が原因で起こるむくみがあります。
まずは片側だけのむくみ(局所的)なのか両側にむくみ(全身性)があるのかを確認し、局所性の場合はふくらはぎの静脈につまりが無いかどうか(深部静脈血栓症)を確認する必要があります。深部静脈血栓症は肺塞栓症といって、肺の太い血管が詰まってしまうとても危険な病気の原因になります。あまり日常的に活動が多くない人や妊娠中の方に起こりがちですが、潜在的にがんを持っている方にも起きやすいと言われています。それ以外の局所的なむくみの原因としては血の流れがうっ滞するうっ滞性皮膚炎、静脈瘤、リンパの流れのうっ滞によるリンパ浮腫、炎症や感染に伴う手足の蜂窩織炎(手足の皮膚の下の組織が炎症により水ぶくれをおこす)、関節炎やリウマチなどが挙げられます。
全身性のむくみの場合は心臓、腎臓、肝臓に重大な問題がおきていないか調べる必要がありますし、そこで問題がなければ甲状腺の機能や栄養状態、内服されているお薬によるものなども考えながら診察を進めます。
どうですか?手足のむくみにもいろんな病気が潜んでいますね。炎症止めのお薬や足を上げたり、圧迫用のストッキングを使ったりとむくみや腫れの部分だけの治療で治るものもあれば、全身性のむくみの場合、重要な臓器の異常が考えられます。まずはご相談ください。

高尿酸血症・痛風

体内の尿酸値が高くなり、7.0mg/dlを超えると高尿酸血症という状態です。この状態が続くと、関節の中で尿酸が結晶化(固まる)します。これに対して白血球が反応し、関節などに炎症を引き起こしたりする病気が痛風です。放置すると、関節ばかりではなく腎臓などにも悪影響を及ぼしたりします。
高尿酸血症・痛風

原因

痛風は30歳以上の男性に多く、プリン体を多く含む食物の過剰摂取や体内のプリン体の過剰な産生、尿酸(プリン体が分解されると尿酸となります)の尿への排泄のバランスが崩れる事により、尿酸値が高くなる事で起こります。食生活や肥満などの生活習慣、遺伝、血圧を下げる薬などが原因となる事もあります。高尿酸血症の方は糖尿病や高血圧など他の生活習慣病を合併しているケースも多く見られますので、このような場合、心臓病や脳卒中などのリスクが高くなりますので、早めの治療が必要です。

症状

尿酸値が高くても、無症状の方も多いので、放置されているケースが多く見受けられます。この状態が長く続くと、足の親指の関節などに突然の関節炎が起きて、関節が腫れ、激痛が起きます。この状態が痛風発作と呼ばれます。痛みはしばらくすると軽快しますが、発作と軽快を繰り返していくうちに、関節の腫れなどの状態が悪化したり、体の至るところに結節(しこり)ができたり、さらには、腎臓の機能の低下や腎臓や尿管(尿の通り道)に結石ができる事で腰や背中に激痛を生じさせたりする事があります。

診断

すでに痛風の発作を起こしている方は足の指の関節をはじめ、身体診察を行います。また、血液検査で尿酸値が7.0mg/dl以上であれば高尿酸血症と診断されます。

治療

まずは食事を中心とした生活習慣の改善が大切です。プリン体を多く含む食品(ビール、酒、レバー・ホルモン・砂肝などの肉類、エビやカツオなどの魚など)を控える事や、逆に低脂肪ヨーグルトやコーヒー、ビタミンCを含む食品などは尿酸を下げると言われていますので、こういった食品を取るのも一つの手段です。尿酸を尿から排泄させるのを促進するために、水分を多くとったり、肥満傾向がある人は運動療法による減量も必要です。このように食生活やライフスタイルを変えてもなかなか尿酸値が下がらない方にや痛風発作を起こしたことがある方には尿酸の生成を抑える薬や、尿酸の排泄を促す薬を、それぞれの症状に合わせて処方します。尿酸値を6.0mg/dl以下(痛風結節がある方は5.0mg/dl以下)にコントロールする事を目標とします。
痛風発作を起こしていて炎症が強い状態の場合は、コルヒチンという痛風発作を和らげる薬や非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)の内服で炎症と痛みを和らげる治療をします。それでも症状が強い場合はステロイドを使用する事もあります。
このように、痛風は全身に悪影響を及ぼす病気ですので、健康診断などで尿酸値が高い事が指摘されたり、足の指の関節が腫れて痛んだりした場合はできるだけ早めに当院へご相談ください。

気管支喘息

気管支喘息とは気管支の粘膜に慢性的な炎症が起きる事で、気管支が細くなり、咳や痰、呼吸困難などを発作的に繰り返し起こす病気です。
気管支喘息

原因

気管支の粘膜が炎症でダニ、ペットの毛、カビ、花粉、ハウスダストなどに対して過敏になっていて、このようなものを吸い込むと気管支にアレルギー反応が起きて症状を起こします。また発作を誘発するものは、解熱鎮痛剤などの薬、風邪、ストレス、タバコの煙、運動、気温の変化などもあり、このような原因となるものをできるだけ避ける事が発作の予防にも繋がります。喘息の発作は夜間や明け方、季節の変わり目、天候の変化時、運動時などに起こりやすいとされています。

症状

咳や痰などが発作的に出てきて、呼気時(息をはくとき)にゼーゼー、ヒューヒューといった音を伴い(喘鳴)呼吸が苦しくなります。発作の度合いによって、歩行や会話すら困難になる事もあり、更に悪い状態になると意識障害や呼吸が止まったりと、命にかかわる状態になる事もあります。

治療

気管支粘膜の慢性炎症が背景にありますので、喘息発作の症状に対する治療と気管支の炎症を抑えて症状を予防する治療の2種類が基本的な治療となります。炎症を抑える薬は吸入ステロイド薬が使用されます。喘息発作の治療としては気管支を広げて発作を抑える、気管支拡張薬の吸入を行います。ステロイドと気管支拡張薬の配合剤もあり、一種類の吸入剤で2つの治療ができます。また、体内でアレルギー反応を起こすロイコトリエンという物質があり、これが気管支を細くする原因になりますので、症状に合わせて、ロイコトリエンの働きを阻害する内服薬も併用されます。治療と同時にカーペットなどハウスダストが溜まりやすいものを避け、寝具などの衛生管理、室内のこまめなお掃除など、普段から発作を予防するための心がけも必要となります。

咳喘息

これはヒューヒュー、ゼーゼーなどの喘鳴はありませんが咳が慢性的に続く病気です。痰を伴うタイプと咳だけのタイプがあります。風邪が治ったあとに、咳だけが長く続くといった場合は咳喘息が疑われます。咳喘息は夜間や季節の変わり目に出たりする事もあり、気管支喘息との関連があると言われています。治療は吸入ステロイドや気管支拡張薬が基本となります。
咳喘息

貧血

貧血とは血液中の赤血球やヘモグロビン(血色素)量が低下(減少)してしまう状態です。具体的には、ヘモグロビンの量が男性で13g/dl未満、女性で12g/dl未満で貧血と診断されます。ヘモグロビンは血液の中の酸素を体の各臓器や組織のすみずみまで運搬する働きをしているので、ヘモグロビンの量が低下すると体のいたるところに酸素の供給が十分に行えなくなるために、それに伴う症状が現れます。

原因

ヘモグロビンは赤血球の中に含まれています。赤血球は骨髄で作られるため、骨髄に異常がある場合貧血を起こします。また日本人の貧血の原因の70%は鉄分の不足による鉄欠乏性貧血です。鉄が不足してしまう原因としては、鉄の吸収を高めるビタミンCや、ビタミンB6、赤血球を作るのに必要なビタミンB12などの不足が挙げられます。また、胃潰瘍、胃がん、大腸がんなどの消化器の病気や子宮筋腫などの婦人科領域の疾患による慢性的な出血により赤血球が失われて貧血を起こします。徐々に進行した貧血は症状も著しくないこともありますが、出血などにより貧血が急激に進行する場合などは、血圧が急に低下してショック状態になったり、意識障害などをおこし、危険な状態になる事もありますので、原因を早く特定して治療する事が大切です。

症状

息切、動悸、頭痛、めまい、立ちくらみ、倦怠感などの様々な症状が現れます。

診断

問診や身体診察で貧血を疑うことは難しいことではありません。当院では血液検査として全自動血球計数器を用いて貧血の迅速な診断が可能です。また、大腸がんや胃がんなどの疑いがある場合は内視鏡検査で診断します。子宮筋腫などの婦人科の病気も超音波で診断が可能です。

治療

貧血の原因となる病気がある場合(がんや潰瘍、子宮筋腫、骨髄の病気)はそれに対する治療を行うことで貧血は改善します。また、鉄分が不足している場合は鉄剤の内服を処方致します。その他ビタミン不足や栄養バランスの問題が原因としてが疑われる場合は食事・栄養指導により貧血の改善を図ります。
貧血はこのようにいろんな原因で起きますので、息切れ、立ちくらみ、めまいや疲労感などの貧血の症状がある方は是非ご相談ください。

禁煙外来

タバコは肺がんのリスクを上げるのはよくご存知かと思います。喫煙する事により、肺がんのリスクを男性では約4.4倍、女性では約2.8倍高めると言われています。禁煙することにより、禁煙からの経過時間が長くなるほど肺がんになるリスクを低下させる事が分かっています。喫煙は肺がん以外では、口腔や咽頭のがん、喉頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がんさらには子宮頸がんの原因になります。がん以外では虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や脳卒中(脳梗塞やくも膜下出血)などの病気や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの原因となります。また、喫煙により喫煙者本人ばかりでなく周りの人にもこれらのような健康被害を引き起こします。近年、使用者数が増えている加熱式たばこにもニコチンや他の発がん性物質が含まれています。
タバコを一日に一箱(約480円)吸う人は年間にして17万円以上の費用がかかっています。また、最近では日本の殆ど全ての公共施設や職場において喫煙ルーム(喫煙ルームを撤廃する動きもでていますので、そのような場合は喫煙のために遠いところまで移動しなければなりません)以外での喫煙ができませんから、1本タバコを吸うのに急いで3〜4分で終わらせたとしても、一箱吸うと毎日1時間20分も喫煙に時間を取られています。ここまで読まれた方には喫煙は正に「百害あって一利なし」である事が再確認できたと思います。 喫煙者はウイルス感染などが原因の上気道炎から肺炎になり重症化するリスクが高い事も知られています。コロナ時代にはぜひとも禁煙したいところですし、コロナ後でも今後、新たな未知のウイルス感染に備える必要がありますから、皆様が禁煙を積極的に考える時期としては非常に良い機会だと思います。
当院では禁煙補助薬を使った禁煙外来を行っております。喫煙はニコチン依存性であるため、自力での禁煙は難しく、自力禁煙の成功確率は3%以下とも言われている一方で、禁煙治療を受けた方は治療後時点で80%近くの人が成功し、治療後9ヶ月後の時点でも約半数の方が禁煙の継続に成功しています。このように、禁煙の成功には医療機関からの支援が非常に重要です。ご自分の健康と大切な家族のためにも、二人三脚で禁煙を実現しませんか。
禁煙外来

禁煙治療の保険適応の条件

1.ニコチン依存症の判定テストが5点以上
2.35歳以上の方については1日の平均喫煙本数×これまでの喫煙年数が200以上である
(2016年4月より35歳未満の方にはこの要件がなくなりました)
3.ただちに禁煙を始めたいと思っている
4.禁煙治療を受ける事を文書で同意している
※過去に禁煙治療を健康保険で受けた事がある方で、前回の禁煙治療初診日から1年経過しないういちは自由診療(保険適応外)となりますのでご注意ください。

治療プラン、費用について

禁煙治療は、健康保険が使えますので、例えば自己負担が3割の方は、12週間(約3ヶ月の治療スケジュールで、2万円程度(使用する薬剤などで若干変動します)です。喫煙を続けるのに比べると安価なのが分かりますね。12週間の間に5回通院をしていただく事になります。詳しくはお気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群(いびき)

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まってしまうのを繰り返し、それにより十分な休息が取れずに日中の活動に支障をきたしてしまう病気です。主な症状として、大きないびき、夜中何度も目が覚める、日中の強い眠気、起床時の頭痛やだるさなどが挙げられます。また、放っておくと、高血圧、心疾患、脳卒中などのリスクを高めるという事も分かってきています。当院では、まずご自宅でできる簡易検査を行い、重症度を推測します。中等度以上と診断された場合、CPAP療法(シーパップ)へと進みます。CPAP療法とは、機械を装着して睡眠中の気道を確保し呼吸を助ける治療法です。重症度に伴い、専門の医療機関へ紹介が必要な場合もあります。詳しくはご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群(いびき)

花粉症

花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉を吸い込んだりすることが原因となって、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどのアレルギー症状を起こす病気です。花粉の飛散期間は長いことから、日常生活に支障をきたすだけではなく、精神的にも落ち込んでしまうこともあります。花粉症のほとんどがスギ花粉症だと考えられますが、近年ではスギ花粉以外の複数の花粉でも症状を引き起こすと言われています。また、地球温暖化による花粉の飛散数の増加、発症年齢の低下も問題とされています。
花粉症

症状

花粉症の症状は、主に鼻の症状と目の症状に現れます。鼻の三大症状は「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」です。目の症状は「目のかゆみ」「充血」「涙」などがあります。他にも、皮膚がかゆくなったり、喉に痛みや痒みが出ることもあります。花粉量が多く、症状がひどい時は、頭痛や倦怠感など全身症状が出る方もいらっしゃいます。気管支喘息などの疾患がある方は、それぞれの症状が悪化することもあるので、相談しながら症状をコントロールできるようにしていきます。

主なアレルゲン

アレルギー反応を引き起こす花粉の代表は、スギ花粉ですが、スギ以外にもたくさんの種類の花粉があります。植物の花粉以外でも、ハウスダストやダニなどアレルギーの原因物質は非常に多く存在します。花粉が飛散する時期に限定して症状が強く出る場合は、その時期の花粉にアレルギー反応が出ている可能性が高いですが、1年中症状がある場合は、植物の花粉以外にアレルギー反応が出ていることも考えられます。
2〜4月:スギ
3〜5月:ヒノキ
4〜6月:イネ科
8〜10月:イネ科、ブタクサ
8月末〜11月:ヨモギ、アサ科

検査と治療

症状の度合いにもよりますが、基本的には抗アレルギー薬などの内服薬、点鼻薬、点眼薬等で治療を行います。ほとんどの患者さんは適切な処方で改善することができます。花粉症以外にもアレルギー体質などの背景因子がおありの患者さんは、アレルギーの原因を特定するために、問診、診察に加え、血液検査よるアレルゲンの検索を行います。アレルギー性鼻炎の原因が花粉でない場合もあります。特に通年性の鼻炎などの方はハウスダストやイヌ、猫などのペットアレルギーの事もあります。鼻炎症状にお悩みの方は是非お早めにご相談ください。